日経平均株価が史上最高値を更新した理由とは

デフレ脱却と企業業績の改善が呼び水
1989年12月以来、約34年ぶりに日経平均株価が史上最高値を更新したことは、単なる一時的な株高ではなく、日本経済が長年の低迷から脱し、再生への足がかりを築いた証しであると言えます。この快挙の背景には、3つの大きな要因が存在していました。
第一に、デフレ経済からの脱却が挙げられます。安倍政権下でのアベノミクスの効果により、金融緩和と円安誘導、成長戦略などの施策が打たれ、その効果がようやく表れてきました。賃金の上昇と購買力の回復が進み、企業業績が伸びる好循環が生まれつつあるのです。いわゆる「デフレスパイラル」から脱却し、経済が上向きになったことが株価上昇の大きな原動力となっています。
第二に、東京証券取引所のPBR(株価純資産倍率)改善策の強化が挙げられます。2022年から段階的に推進されてきた自社株買いや増配の促進により、ROE(株主資本利益率)が向上し、PBRの改善につながりました。ROEは株主から預かったお金に対する利益率であり、投資家にとって重要な指標です。この改善が、これまで低かった日本株への外国人投資家の買いを呼び込む大きな要因となりました。
第三に、この需給の改善があげられます。外国人投資家による日本株の買い越しが2024年に入って続いており、株価上昇を大きく後押ししています。市場関係者によれば、年初から現物・先物合計で1兆8000億円強の買い越しとなっているとのことです。世界の投資家が日本株のウェイトを引き上げたことで、買いが急に止むことは考えにくく、需給が改善したことが株価上昇を支えています。
適正な水準の株価、「バブル」の再来ではない
一方で、この株高が「バブル」の再来と指摘する向きもありますが、現在の株価水準は決して高すぎるものではありません。1989年末のバブル期には、PERが61倍、PBRが5.6倍と、株価が過熱し、行き過ぎた状態にありました。しかし、2024年2月22日現在ではPERが16.4倍、PBRが1.49倍と、企業業績に見合った適正な水準にあります。また、長年低迷を続けてきたGDP(国内総生産)もようやく伸び始めており、株価は企業業績の拡大分だけ上昇しているに過ぎません。
つまり、今回の株高は、バブル期のような「行き過ぎ」ではなく、日本経済が実体経済の回復とともに健全に上昇していることの表れなのです。大手証券によれば、1989年末と比較してアメリカのS&P500種株価指数は実に13倍になっているそうです。ようやく、長年の低迷から解き放たれた日本株は、世界の経済状態に追いつきつつあると言えるでしょう。
この史上最高値の更新は、日本経済が再生への足がかりを築いた証しであり、デフレ経済からの脱却、企業業績の改善、需給の改善が呼び水となって実現した快挙なのです。今後も、賃上げの加速と資本効率の向上など、更なる努力が求められますが、日本経済が新たなステージへと踏み出した兆しであることは間違いありません。