シャープ・レシオで気をつけたいこととは

同種商品間の比較と通貨の違いへの配慮
シャープレシオは、同じカテゴリーに属する商品やポートフォリオを比較する際に意味があります。例えば、債券と株式のようにリスク・リターンの特性が全く異なる金融商品を比較しても、あまり意味がありません。それぞれの商品が持つ目的や用途が異なるためです。したがって、シャープレシオは同種の商品間での比較に限定して活用するべきです。
また、異なる通貨建ての商品を比較する際は、為替レートの変動によりリスク・リターンが影響を受けます。そのため、比較対象の商品のリスクとリターンを同一の通貨ベースに換算する必要があります。通貨が異なれば、シャープレシオの値も変わってしまうためです。例えば、米ドル建ての商品と円建ての商品を直接比較することはできません。事前に一方の通貨に統一しなければなりません。
比較期間の統一と運用成績の解釈
シャープレシオは一定期間の実績値に基づいて算出されます。比較する商品やポートフォリオの期間が異なれば、値動きが変わり、リスク・リターンの水準も当然異なってきます。そのため、比較対象を同じ期間に統一する必要があります。例えば、ある商品が過去5年間の実績値に基づくシャープレシオであれば、比較対象も同じく5年間の実績値から算出したシャープレシオと比べなければなりません。
さらに、運用がマイナス成績の場合、シャープレシオの解釈には注意を要します。通常、シャープレシオはリスクが大きいほど小さな値となりますが、マイナス運用時はこの関係が逆転します。つまり、リスクが大きいほどシャープレシオの値は大きくなるのです。例えば、リターンが-1%でリスクが5%の場合、シャープレシオは-0.22となります。一方、リスクが10%であれば-0.11と大きな値になります。このように、マイナス運用時のシャープレシオの解釈は一般的な場合と異なるため、注意が必要です。
シャープレシオは投資のリスク対リターンを評価する上で有益な指標ですが、その適切な活用のためには上記の留意点を理解しておくことが重要です。この指標の長所と短所を冷静に見極め、他の指標とも組み合わせながら総合的に判断することが賢明でしょう。特に、シャープレシオは過去の実績値から算出されるものであり、将来の運用成績を予測するものではありません。投資判断を行う際は、この点を十分に認識しておく必要があります。