シャープ・レシオの注意点

シャープ・レシオは投資における重要指標ですが、比較する上で注意するべきポイントもありますし、盲信していいというわけでもありません。ここでは、運用の効率性をはかるシャープ・レシオを扱う上での注意点について解説します。
カテゴリと期間を揃える
シャープ・レシオは、あくまでも同じ通貨建てのカテゴリ(アセットクラス)で揃えることが大切です。
前回はラーメン屋のスタッフ採用の例を出し、ラーメンの提供が早い人と餃子の提供が早い人、どちらがより生産性が高いかどうかについては数値化できそうだ、という話をしました。ただし、これは料理人同士だったからなんとか比較できそうなのであって、料理人とウェイターのどちらを雇うか?という話であれば、比較することはかなり難しくなったでしょう。
シャープ・レシオを出すときにも、日本株同士、米国株同士など、アセットクラスを揃えて比較するのが基本です。シャープ・レシオで比較する場合には、必ず同じ期間のデータを使わなければなりません。シャープ・レシオではリスク(リターンの振り幅)も計算に関わってくるので、期間は非常に重要な指標です。例えばコロナショックの影響が含まれているデータと含まれていないデータを並べても、運用成績の比較にはなりえません。
自分に合っているかは別問題
例えば、「米国株」と「日本債権」を比較することはかなり難しいでしょう。それは、シャープ・レシオでは同じカテゴリを比べるものだからというわけではなくて、性質が異なるからです。もしあなたができるだけリスクを取りたくないと考えているのであれば、そもそも米国株への投資は論外だと感じるはずです。逆に、どれだけシャープ・レシオが良いと言われようとも、「今のうちに、できるだけリスクを取って大きなリターンを生み出したい」と考えているのならば、債権は眼中に入らないでしょう。
シャープ・レシオだけではなく、自分がリターンをどれくらい欲しているか、それを得るためにどれだけのリスクを許容できるか把握しておくことが大切です。
確実ではない
シャープ・レシオといえども、確実ではないという点に注意する必要があります。なぜなら、シャープ・レシオはあくまでも過去の期間の数値であるからです。過去に運用成績がよいからといって、未来もずっとこの成績を担保し続けるかどうかは分かりません。将来にもこのようなリターンが得られるかどうかについては、シャープ・レシオ以外の要素でCHECKする必要があります。